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コンピュータグラフィック原体験

コンピュータグラフィック原体験

先日ラファエル・ローゼンダールの展示を見てから、子供の頃に遊んでいたコンピュータソフトのことを思い出していた。 それは彼の作品とは違ってベクターではないけれど、シンプルな図形やグラデーションなどを用いてループ動画をつくることができる。 思い出しながら単語で検索すると、明らかになってきた。 これは記憶の記録です。


家で一番最初に買ったパソコンは、「Macintosh Performa 588」だった。 発売時期が1995年で新品で買ったというから、その当時だと3歳になるが、それだと記憶が危うい。計算がおかしい。 最初に遊んだのは1996〜7年くらい? 小学校低学年くらいまで飽きずに遊んでいた記憶がある。

sumally.com

そのPCの付属ソフトの中に「Thinkin’ Things」という数種類のゲームができるものが入っていた。 プレイ動画を見つけた。懐かしすぎた…。

 

図形組み合わせ系のゲームが2種類あった。

一つ目が「BLOX Flying Spheres」。 音楽に合わせて球を配置・移動させて動画をつくる。

http://www.mobygames.com/game/windows/thinkin-things-collection-1/

  • 1つ1つの球を画面内に配置する(配置できる最大数が決まっていたはず)
  • グラデーションの黒の方が遠く、カラーの彩度が高い方が手前で奥行きのある空間になっている
  • 奥行きに応じて球のサイズが変化する
  • 90度、45度、ランダムに動かすことができる/止めることができる
  • 画面枠でバウンドさせることができるし/はみ出して見えなくなるようにできる
  • 15種類くらいの中からBGMを選択できる/ミュートできる
  • 背景色とパターンを変更できる
  • 完全オリジナルでなくても、既存のアイディアパターンを編集することもできる

[アイディアパターンで印象に残っているもの]

  • 球を蛇のようにつなげ、左右折り返して並行移動する/円グラデ、赤の背景/戦いっぽいBGM →印象:大蛇とのバトルのようでこわい

  • 線に見えるくらい数多く背景奥の谷間(十字)に球を配置し流れるように交差して移動する/4分割グラデ、白/音数が少なく起伏のない静かなBGM →印象:上空から見て高層ビルの谷間で行き交う車のライトのよう、しかし遠いので静か、都市  

色や曲数などそれほど多くなく限られているが、組み合わせパターンは膨大になる。

 

二つ目が「BLOX Flying Shapes」。 図形一つ一つに音を録音でき、それを配置・移動・回転させて音までオリジナルで動画をつくる。

http://www.mobygames.com/game/windows/thinkin-things-collection-1/

  • 図形は3段階で拡大縮小可能、デフォルト図形のセットは数パターンあり選択できる
  • 画面内に図形を配置する(配置できる最大数が決まっていたはず)
  • 90度、45度、ランダムに動かすことができる/止めることができる
  • 画面枠でバウンドさせることができるし/はみ出して見えなくなるようにできる
  • 図形ごとに音を録音できる、図形自体を回転させることで再生(静止しているものは音が出ない)
  • 回転速度によって再生速度が変わる(速いと早送りで高くなる、遅いとスローで低くなる)
  • 完全オリジナルでなくても、既存のアイディアパターンを編集することもできる

[アイディアパターンで印象に残っているもの]

  • 背景に静止した家、手前で音が出るオブジェクトが左右行ったり来たりしている →印象:景色の中に、動く主人公がいる

  • 支柱は静止していて、同じ図形を規則的に並べてつくられたかざぐるまもしくは風車のような構造になったものが回っている →印象:「風車みたい」と具体的なモチーフがわかる  

背景は方眼ドットのような柄が入った黒で変化なく暗い感じ。 図形に吹き込む音は何度でも録音し直せるのでオリジナリティが失われず飽きることがない。

 

すこし機能が違って、それぞれ楽しみ方が違う。

一つ目の方で印象に残っているアイディアパターンの2つを比べて気づいた。 「横から見た景色」「真上から見た景色」を視点の違う画づくりができることをサンプルが示している。 形は同じでも、遠近の活かし方やサイズ・色の組み合わせ次第で全く違う雰囲気をつくれる。

二つ目の方で印象に残っているアイディアパターンを思い出してみると、 静止しているもの/動いているものの使い方で、背景と主人公、奥行きをつくれること、視線の集中を生み出せること、図形の組み合わせで具体的なモチーフをつくることができることをサンプルが示していると思った。

 

取扱説明などはなく、操作する中でできることを発見し、ルールを理解する。 言語がわからなくてもアイコンで機能を理解できる。 ルールに基づいた環境の中で、やってみたいことをやって、つくってみたいものをつくる。

「あるルールに基づいた環境の中で作られる表現」に取り組んできた彼の作品に心を動かされるとき、自分の中に根強く残っているこの体験が思い出された。