マフラーとムートンブーツ
12月に入ってから急に気温が下がって、退勤の時間はとくに寒さを感じる。
前方から冷たくて強い風が吹いて、前を開けて着ていた上着の間からダイレクトに体に当たったとき、(もう十数年前の)学生時代のことが思い出された。
中学生の頃、フードにファーのついたショート〜ミディアム丈のダウンが女子の間で流行っていた。派手な色は校則上着られないので、白か黒かの選択肢しかない。色だけ指定で形はなんでもいいんだ、というツッコミはさておき。
制服の上はまだしも、いや合わないけど、帰りはジャージに着替えて帰るので、ただ青いだけで装飾のないジャージの上にファー付きダウンって今思い返すと変な格好をしていたなと思う。
私もみんなと同じように、黒のダウンを着ていた。白派が多かった気がするが。寒かったので前のチャックは必ず閉めていた。開けていたら風が吹き通して上着を着ている意味がなかった。
太平洋側で雪は少ないが、湿度が低いぶん刺すように冷たい風が吹く地域だった。
しかし、開けるのがカッコいいという風潮があった。前を閉めて着なさい、と先生はよく注意していた。その目的が、身体を冷やしたらいけないということだったのか、風紀の乱れ?を正したいということだったのかは覚えていない。
かっこよさよりもあたたかさを優先していた自分にとって、怒られても意地でも開けているみんなの気持ちはよくわからなかった…私服の上に着るダウンのこだわりならまあわかるけど、ジャージ姿にかっこよさもなにも無い。※
どちらかというと生真面目で先生が言うことは素直に守っていた自分にはなかった、思春期の反抗心と美意識が他の人にはあったのかもしれない。
※ジャージのズボンの裾がすぼまってるのはどうしても気に食わなかった。それはダサいと思っていた。卒業アルバムを突っ込んで頑張って伸ばしてアイロンをかけて、地味な改造に勤しんでいた。(派手にやる人は裾やセンターラインの糸を抜いたりダメージつけたり…)
北の地域なので冬はそれなりに寒い。
積雪が少ないとはいえ歩きづらいほど積もるときも度々ある。
高校生のときも理解し難い風潮があった。
「コートは着ないでマフラーだけがイケている」ということ。これは自分の学校だけではなくてきっと市内全体そうだったんじゃないか。駅で見かける他校の学生もそういう人はいた。
どう考えても寒い。風邪ひく。寒いと思っていたので私はコートを着ていた。高3の記憶は確実。
正統派の、黒・紺・グレーのPコートやダッフルコートは普通すぎて地味で嫌、と思っていたのでジャスコのライトオンで買ったくすんだ抹茶色のPコートを着ていた。(この頃私は、ヴィレヴァンにわくわくするような、定番や普通はつまらないと思っている自意識過剰な田舎の高校生になっていた。)
マフラーしかしてないくせに、みんな足元は揃いも揃ってムートンブーツを履いていた。ローファーのようなかたい革靴は、氷の上は滑るし雪や溶けた水が跳ねて入ってくるし、ふわふわで暖かいムートンブーツは実用的だった。
色の王道があって、大体はキャメルを履いていた。ギャルは特にそう。
これもみんなと同じは嫌だと思って、茶色のムートンブーツを履いていた。
「マフラーとムートンブーツがイケてる」っていつからそうなったんだろう。今の高校生はどんな格好をしているんだろう。あたたかい格好でいることが流行っていて欲しい。歳を重ねると体を冷やさないことがいかに大切か思い知る。身体を大事にしてほしい。