Back
トーマス・ルフ展を見ました

トーマス・ルフ展を見ました

大学の研究室の先輩と同級生と、国立近代美術館で「トーマス・ルフ展」を鑑賞しました。 展示を見るまで予備知識はなく、全く知らない状態で、フライヤーのシンプルなビジュアルに惹かれて行きました。だいぶ時間が経ってしまったけれど、好きだなあ、おもしろいなあと思ったので、ネットで調べたり貰った展示マップを見て思い出したりしながら特におもしろいと思ったシリーズについて感想を残しておきます。記録として以下展示見どころの引用。

トーマス・ルフ(1958年ドイツ,ツェル・アム・ハルマースバッハ生まれ)は,アンドレアス・グルスキーやトーマス・シュトゥルートらとともにデュッセルドルフ芸術アカデミーでベルント&ヒラ・ベッヒャー夫妻に学んだ「ベッヒャー派」として,1990年代以降,現代の写真表現をリードしてきた存在です。

本展はその世界が注目する写真家の,初期から初公開の最新作までを紹介する展覧会です。ルフは初期に発表した高さ約2メートルにもなる巨大なポートレート作品で注目されました。それ以降,建築,都市風景,ヌード,天体などさまざまなテーマの作品を展開,それらを通じ,現代人をとりまく世界のあり方についてのユニークなヴィジョンを提示してきました。

私たちの視覚や認識に深く組みこまれた写真というメディアそれ自体も,ルフ作品の重要なテーマのひとつです。ルフは自ら撮影したイメージだけでなく,インターネット上を流通するデジタル画像からコレクションしている古写真まで,あらゆる写真イメージを素材に用い,新たな写真表現の可能性を探究しています。作品選択や展示構成にルフ自身が参加するなど,作家の全面的な協力を得て実現する今回の展覧会では,未発表の新作を含む作品世界の全貌を紹介します。

 

img_works_3

Häuser (1987—1991)

ハウス。「タイポロジー」という、同じ撮影方法やフォーマットを用いて撮影した一連の被写体対象をグリッド上や横一列にまとめ、似たもの同士を並べることにより、浮き上がってくる差異や共通性などを探ろうとする独特の写真表現を用いた作品のシリーズ。 2枚のネガを接合し、レタッチやカット&ペーストといった画像処理を施して作品にしている。均一に整えられた形、光のムラのない色、風景などのノイズを排除…とまでは行かずとも減らし、対象物の存在感を強調させているように感じた。静かな、物寂しい感じがしたのはひと気がないからか…

  img_works_7

andere Porträts (1994—1995)

アザー・ポートレート。モンタージュ合成写真機を使用して制作されたもの。男か女かわからない、実在しない人物の写真が並んでいた。先ほどと打って変わって、輪郭がはっきりしない、存在が危うい、「境界」をぼやかした不安定な作品だった。

  img_works_5

Zeitungsfotos (1990—1991)

ニュースペーパー・フォト。報道写真、事件現場、戦場、煙突から煙が出ている工場の写真、首相の肖像が印象に残っている。実寸の2倍に引き伸ばしての出力。“テキストとイメージの共犯関係”の上に成り立っている新聞記事の写真をその場所から切り離すと、想像を働かせるものに変わる。

  img_works_12

jpeg (2004—)

Jpeg。デジタル画像の解体が主題となっており、デジタル画像がもっている「構造」への関心が加わっているシリーズ。前のニュースペーパー・フォトもそうだが、自身が撮影手法を探るのではなく、ある画像に手を加えて表現手法を探っている作品だ。見る人の行動(視点の移動)によって見え方が変わる。

  img_works_18

press++ (2015—)

press++。アメリカや日本の報道機関に保管される印画紙にプリントされた写真原稿をスキャンし、画像処理ソフトを使って、画像面と文字などが書き込まれた裏面を1つの画面に統合した作品。記録としての写真に、本来であれば写真の邪魔にならないところに記されるはずの、補足としての詳細な状況を説明するテキストが統合されている。テキストが手書きであること、時間的な経過が感じられる汚れ、また写真が示す内容とは直接無関係の印などの不要な情報も一つの面にコラージュされているところに面白さを感じた。

  シリーズごとにコンセプトがはっきりしていて、意図することを感じられた。