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一学期の終わりの夜のこと

6月の初めによみうりランドの隣のスーパー銭湯に行ったとき、よみうりランドで「ホタル鑑賞イベント開催中」の看板を見かけた。ずいぶん早いな、と思ったが温暖化が進んだ関東は例年これくらいの時期に蛍が見られるんだろうか。

子供のころ、夏になると山のほうへホタルを見に行った。

一学期の終業式、7月20日あたりの海の日がある週の土曜から夏休みに入る。そのあたりに出かけていた記憶がある。ホタルのことを考えると、これから長い夏休みが始まる、というわくわくした気持ちも思い出される。夜のおでかけ、というのもいつもと違うシチュエーションで楽しかった。

早めに晩ご飯を食べたあと、祖父の車と父の車の2台で、いつも階上のほうへ向かった。

街を離れて、街灯がまばらで薄暗い、田んぼの中の舗装道路を走る。カエルの鳴き声がたくさん聞こえる。広い田んぼの奥は暗い林になっている。田んぼの上にぽつぽつ光が見えてくる。奥の林の真っ黒の上に光が浮かぶ。ふわふわと点滅しながら動いていく。

田んぼの脇にツユクサが生えていた。濃い青の花が咲いて、細長い葉は肉厚で柔らかかったような。その葉のところを見るとホタルが留まっていることが多かった記憶がある。

黄緑と黄色の間の発光色が記憶に残っている。自然のものというのが不思議な色。